《豚丼》
北海道は帯広に行くと、
豚ドンのノボリが、大量にはためいている。
豚ドン専門の店があるでもなく、
いろんな店が豚ドンをメニューに貼り出してある。
そう云えば、これまで様々な丼を食べてきたつもりだったが、
帯広名物の、豚ドンだけ、手にした経験がなかった。
うかつだった。
いや、わざと、
うかつにしていたのだ。
「豚ドン食うなら、やっぱ帯広に行かなくっちゃ!」
初食いは、現地で!
誠実に守り通してきたのだ。
そして、目の前に、その豚ドンがある。
見た目は、ウナ丼に似ている。
ゴクリっ
涎が大量に出そうな色合いをしている。
豚ドンは、店によって味が違う。
え~こんなにぃ?
それほど違う。
私は、4軒の豚をヒーヒー言わせたのだが、
4軒ともかなりの味の違いがあった。
まったく別物的な店すらあった。
最も肉が厚かったのは、空港のレストランであった。
(肉が厚ければ良いのかどうかは定かでない)
始めに、ウナ丼に似ていると言った。
その理由は、
ご飯と豚とタレだけの食べ物だからだ。
他は、何もない。
野菜がない。
栄養的には、偏っている。
サラダか何か、サイドに付けた方が、オジサンは喜ぶ。
「野菜なんかいらねえよ」
若者は、豚ドンの単一性を喜んでいる。
「極寒の大地で、豚を育ててなあ~」
開拓当初の厳しさを豚でやりくりした時代に思いを馳せ、
「野菜を育てる場所すら無うてなあ~」
豚ドンに野菜が入っていない事に、文句を言ってはいけない。
「マイナス20~30℃の中で、樹を切り、野を漉き、
食うモノは、豚と同じものを食っていたもんじゃ」
偉大なる開拓者達の精神が、豚ドンに宿っている。