問題は赤潮だ。
「おおい、船を出して、魚釣りに行こう!」
東京湾を眺めながら、私が呼びかける。
イシマルがライダーとして所属するウインドサーフィンのショップ
《ティアーズ》には、
エンジン付きの小舟がある。
そいつでトローリングをやろうという目論見だ。
4人の仲間が乗り合わせ、沖にこぎ出す。
ん・・なんか臭い。
海面を見降ろすと、赤黒く濁っている。
「赤潮だ!」
赤潮とは、植物性プランクトンが大量に発生して起こる現象だ。
赤潮が発生すると、当然のことだが、魚は釣れない。
何にでも喰らいつく青魚でさえ、食欲が減退するらしい。
人間だって、ひどい悪臭のする場所で、
お弁当をひろげる勇気はない。
たとえ、どんなに腹が減っていてもだ。
食べることしか興味のないと思われている魚でさえ、
さすがにゲンナリするようだ。
同じくゲンナリしているのが、カモメだ。
海上に、カモメがいない。
ナブラ(鳥山)が出来ていない。
さしものカモメも、食事は諦めたとみえる。
しばしの断食である。
海が、一瞬、死にかけている。
問題は、海の<富栄養化>だ。
消化できないほどの栄養を、海に食べさせようとしたのだ。
誰が?
たぶん、私たち人間が。
外洋から新たな海流が流れ込んでこない限り、海は甦りにくい。
《母のように海はひろく》
昔から耳にする言葉だ。
しかし、以外に母は繊細で、
なんでも飲み込めるほどの包容力は持っていない。
母が逆ギレしたら、手に負えない。
食べさせ過ぎたら、すぐに太るし・・・
お母さんは大切にしよう。
明日、魚を食べたかったなら・・