鳳凰三山のひとつ、《地蔵岳》 2764m
日本にある山の中で、異彩を放つ頂上をしている。
まるで、彫刻家が、想いのたけをぶつけたような、
不思議な形をしている。
遠くから眺めると、滑らかな表面をしているように思える。
ホイップクリームをケーキの上に搾り出したとも言える。
頂上には、チューリップに似たひと際大きな岩が乗っかっている。
見た目は美味しそうである。
そのチューリップのテッペンが、地蔵岳の頂上だというのだ。
つまり、2764mを極めるには、
あの岩を登らなければならない。
日本の山で、
頂上がロッククライミングってのは、あまり聞かない。
ここまで、読んだアナタは、今こう思ったネ。
「ってぇ事は、イシマルのお馬鹿は登ったんだ!」
(その感想は、ひとまず置いておこう)
頂上の尖峰に向かって、踏み分け道がついている。
辿った。
やがて、クライミングになる。
遠くから見て、美味しそうと勘違いした岩肌は、
思いのほか、ザラザラしている。
ホールドもしっかりしている。
そして、頂上直下の大岩の前に立った。
岩は3つに分かれており、その間にクラック(溝)が見える。
溝に体を挟み込んで登っていけばいいのだろう。
ん・・?
よく見ると、頂上から茶色のロープが垂れているではないか。
コレを伝って登るのかい?
それとも、登ったはいいが、降りれなくなる人の為に、
フィックス(固定)ロープを張ったのだろうか?
肝心なのは、「
いつ張ったか」と云うことだ。
ロープは、時がたてば劣化する。
「登らない方がいい。毎年、何人か落ちてるでナ」
前日泊まった山小屋の主人がのたまう。
すべては自己責任ということだ。
落ちるのは、個人の勝手だが、
レスキューするのは、回りにいる登山者とレスキュー隊である。
「よし、登るなら、あのロープに頼らず、
自分のロープや道具を持ってきてからにしよう!」
後ろ髪を惹かれながら、地蔵岳をあとにしたのだった。