そこは、風呂屋だった。
すぐ隣で、体を洗っているオジサンがいた。
そのオジサンに、私の目がとまった!
最近の風呂屋では、<自動お湯出し器>が主流だ。
ソレは、ドンッと押せば、
一定時間お湯が出るシステムだ。
一定時間=一定量
例えば・・
洗髪をしようと、そのボタンをドンッと押せば、
しばらくお湯が出続ける。
しかし、あるタイムを過ぎると、突然止まる。
止まったら、もう一度、そのボタンを押すしかない。
このタイムは、風呂屋によってまちまちだ。
30秒出続ける風呂屋もあれば、10秒で止まるスパもある。
出ている途中で、再び押せば、タイムは新たに刻み始める。
ここで、本日の物語が始まる。
隣のオジサンの動きがめまぐるしい。
体を洗った後のすすぎをシャワーで行っているのだが、
左手にシャワーノズルを持ち、
右手で、シャワーボタンを押している。
この風呂屋の場合、シャワーが出続けるタイムは12秒だ。
(私が測った)
オジサンの右手が、しきりにボタンを押す。
その間隔が、なんと・・
5~6秒なのだ。
どうやら、
シャワーが途中で止まってしまうのが、
ことのほか嫌いらしい。
《しきりなおし》という作業になじめないオジサンなのだ。
常にお湯がノズルから出続けていないと、気持ちがのらないらしい。
この考え方はわかる。
私も、お湯が切れるのが、嫌いなタイプだ。
さっきすすいでいた時、
9~10秒程度で、ボタンを押していた。
たまに、12秒を経過し、お湯が切れると、
「チッ、失敗したか・・」
不必要な残念舌打ちをしたものだ。
おっ・・オジサンが洗髪に移行したゾ。
さて、すすぎはどうなるのだろう?
さりげなく眺めていた。
すると、どうだ!
同じく左手にシャワー。
右手はボタン。
お湯を浴びながら、右手で髪を掻きまわす。
やには、ボタンを叩く。
ドンッ!
さっと髪を掻きまわす。
すぐに、ドンッ!
この間のタイムが、
2~3秒!
ドンッ!ジャー、ドンッ!ジャー、ドンッ!~~
おそらく、オジサンは、
昔、
洗髪中にお湯が自動で止まってしまった
いや~な記憶があると思える。
今後、二度と<お湯止まり>を経験したくない、
その思いで、ボタンを叩き続けていたと察する。
目をつぶっている分、拍車がかかってしまったのだ。
止まるだいぶ前に、ドンッ!
かなり前に、ドンッ!
それが、どんどんエスカレートし、ついに、
3秒で、ドンッ!
2秒で、ドンッ!
思わず、横から手を出し、
ボタン助手として押してさし上げたくなる。
このままいくと、来年あたりに、お会いできたら、
究極が見られるかもしれない。
1秒で、ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!!!!!