歌の歌詞を、誤解して歌っている場合がある。
私のケースは、この歌だ。
《いつでも夢を》 昭和37年
唄 橋幸夫 吉永小百合
星よりひそかに、雨よりやさしく
あの娘はいつも歌ってる
こえがきこえる 淋しい胸に
涙に濡れたこの胸に
一番の歌詞を書いてみた。
けんじろう君がこの歌を聞いたのは、小学高学年の頃。
大分県の、田舎だった。
歌詞の3行目に注目してほしい。
<こえがきこえる>
コレを漢字に当てると、
<声が聞こえる>
誰が聞いても考えても、
声が聞こえる、である。
ところが、けんじろう君にはそう聞こえなかった。
当時の田舎は、田圃や畑ばかりだった。
畑の中には、糞尿を溜めて、醗酵させ、有機肥料として、
畑にまく為の、<肥え溜め>があった。
かなりの匂いを発し、子供たちには、
<コエタコ>と呼ばれていた。
「おおい、又、誰かコエタコに落ちたゾ!」
コエタコは、
周りに囲いが無かったセイで、
年に何人か、中に落ちた。
命には拘わらなかったものの、村では、中傷のタネとなった。
「○○ちゃんが、コエタコ落ちたで~」
○○ちゃんは、傷ついた。
けんじろう君は、落ちなかったものの、
かなり際どい場面に何度も遭遇した。
「おっとっと、ひえ~あぶねえ~!」
ギリギリでクリアしたこと限りなく。
なんせ、道路の脇にあるのに、囲いがない。
壁や、垣根が無いのである。
そんな時、くだんの歌が流れてしまった。
「こえがきこ~えるぅ~」
けんじろう君の頭脳は、瞬時に反応した。
「こえがき?」
肥えの垣根?・・・肥垣!
有って欲しいと願っていた、肥えの垣根・・肥垣だ!
「
肥垣 越~える」
なんと、肥えの垣根を、越えようというのだ!
越えたらどうなるか?
ドボン?
恐ろしい結果が待っているにも拘わらず、
勇気を持って越えようというのだ。
そう!
けんじろう君には、この歌《いつでも夢を》は、
<いつでも勇気を持っていこう!>と云う歌となった。
コエタコに落ちるかもしれないような悲惨な状況でも、
あえて立ち向かい、勇気を持って生きていこう!
コエタコくらいなんのその!
この誤解を知ったのは、30才の頃のカラオケである。
しかし、正解は知ったものの、誤解はとけない。
私の中ではあくまで、
<肥垣 越~える>
さあみんな、大きな声で、勇気の歌を唄おうではないか!
「♪~こえがきこ~える~♪」