秋はススキだ。
「秋は、夕陽だ!」と過去の私がどんなに主張しようとも、
今は、忘れてくれればありがたい。
秋はススキだ。
「ススキは逆光だ!」
ススキを撮影しようとするなら、逆光に限る。
まぶしい思いをしながら、シャッターを押しているのが正しい。
ススキとは、銀色の枯れ葉の代表格だ。
ススキが風にゆれている姿を見ていると、
シルバー髪がなびくオジサンが、
秋風の中、肩をすぼめている姿を想い起こさせる。
「そうだ、おみやげにススキを持っていこう!」
ひとつ年上の兄がやっている蕎麦屋に、
蕎麦を食いにいくおみやげに、
ススキを刈って、持っていこうと考えた。
この時期、探さなくても、ススキはどこにでも生えている。
自転車を止め、河原に降りてゆく。
「さあ刈るゾ」
刈ると言ったものの、カマは持参していない。
手で折るのだ。
グイッ
ん・・?
なぬっ、折れないじゃないか・・
細い茎のクセして、なんともネバリある腰をしている。
この細さでこの腰!
無理やり、折ろうとすればするほど、腰にネバリが出てくる。
強くなってゆく。
なんとなく50本ほど採ろうと、思っていたのだが、
素手では、とてもとても・・
ここで、腕を組んで考えた。
このまま続けても、手の平を痛めるばかりだ。
なにか方法を考えねば・・
そこで、ススキを根元から撫であげてみた。
ん・・?
節があるではないか?
よし、ここで、折ってみよう。
ポキンっ
いとも簡単に折れた。
折れ千切れた。
はなっから、コレでいくべきだった。
「おみやげで~す!」
蕎麦屋に持ち込んだものの、さして歓迎されかなった。
「コレっ、天然モノだよ!」
おふざけも、利かなかった。