銀杏を炒った。
生銀杏を、フライパンで炒った。
10分も、鉄板の上で転がすと、
かぐわしい香りが立ち昇る。
テーブルの周りには、ペンチを手にした滝田君が、
虎視眈々と目を光らせている。
なるほど、ギンナンは、ペンチで割るにかぎる。
それも、 正当派のペンチが望ましい。
正統派とは、銀色の、ペンチらしいペンチだ。
その真ん中のギザギザがカーブした辺りに、
ギンナンを挟み込み、力を加える。
ここが肝心だ。
ギンナンに対する愛情で、割り方が決まる。
微妙な力加減がその後の、
ツマミとしてのギンナンを左右する。
いい加減な気持ちで、力を加えると、
まず失敗をする。
パチっと割れずに、グチャっと割れる。
実に傷がつく。
傷ならまだしも・・壊れる。
壊れて、皮の中に実が少し残る。
そいつを取り出すのは困難だ。
ギンナンに愛情のない人が割り続けると、
皿の中は、様々な形のギンナン崩れが混濁している。
それに反して、愛情溢れる私の皿は、じつに美しい。
整然とした黄色いギンナンで満ちている。
ビールをグビリとやり、
ペンチで、パチっと割る。
5個に1個、口に放り込む。
ギンナンを割る仕事を言いつかったものの、
その代償として、ビールのツマミに頂いている。
愛情溢れる私をもってしても、
ギンナンは、間違い割れる事がある。
間違い崩れたギンナンはすぐさま、
口に放りこまれる。
ゆえに、私の皿の中は、
崩れなかったギンナンのみが集められ、
常に美しく整然としている。
そういえば、さっきから滝田くんが静かだな。
アレっ、滝田くん、
君の皿には、ギンナンが入っていないじゃないか。
ゲッ・・全部食べちゃったの?
by ishimaru_ken
| 2014-01-13 05:35
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