我らが与論島が、一昨年、昨年と巨大な台風に襲われ、
大きな災害に見舞われた。
瞬間風速70mを記録したというのだから、驚異である。
多くの家屋が崩壊し、未だ、仮設住宅待ちの家族がいる。
「屋根ないですネェ」
まだ屋根がないとボヤいている
タクジ君がいる。
「布団欲しいですネェ」
南国なのに、寒いと嘆いている
カズ君がいる。
「周りの家造りが忙しくて、インゲン畑できません」
とりあえずの住処を造るのが忙しく、
お百姓仕事に手が廻らない
シゲさんがいる。
「収入ないけど、まあなんとか」
霞を食っている
カワセ君もいる。
その中でも、屋根がないとボヤいているタクジ君。
タクジ君は、色が黒い。
南国の人間の中でも、めっぽう黒い。
あまりにも黒いので、常に皆にひやかされている。
ところが・・・
今は冬だ。
我らは、タクジ君の冬の姿しか見ていない。
ここに、タクジ君の奥さんが登場する。
「タクジは、冬には、色が白くなるんです」
現在の冬のタクジ君は、
奥さんから見れば色白らしい。
「真夏になるとネ・・」
『はい』
「家の中で、裸同然で暮らしていると・・」
『ゴクッ』
「見えなくなるんです」
あまりの色の黒さに、柱だのタンスだのの色に紛れて、
保護色で、見えなくなると証言している。
「タンスを引き出そうと、取っ手に手を伸ばしたら、
タクジの口に、手を突っ込んでしまいました・・
あははは~」
んな馬鹿な?
真冬に裸で海に出る シゲとカズ兄弟