《ウマズラハギ》
カワハギと言う魚は、何種類かが生息している。
代表格は、本カワハギとウマズラハギだ。
本カワハギは、本と付くので、本物と思われている。
本家の本でもある。
釣り人は皆、本カワハギを好み、
ウマズラハギが釣れると、
「な~んだ、ウマズラかよ~」
と嘆く。
嘆いたあまり、その辺に、ポイっと放り投げる人もいる。
持って帰らないと言うのだ。
とても可哀そうな魚である。
しかし、悲劇の主人公なのに、顔つきが、
のんびりしたウマズラ顔なので、同情されない。
ところがネ!
ここで、私が登場する。
ウマズラ大好きのイシマルだ。
本カワハギより、ウマズラが好きなのだ。
皆は、本カワハギの方が、身が甘くて美味しいと言う。
しかし、私の意見は違う。
ウマズラはフグに近い身の締まり方としている。
実際、フグ造りを拵えてみると良くわかる。
包丁をはじかんばかりの、身の弾力だ。
ゆえに、噛み締める味わいが生まれる。
そして何よりの魅力は、その肝だ。
カワハギの肝とは、
美味の中でも特級品だと言われている。
その肝は本カワハギより、格段に大きい。
3倍くらいある。
さらに、臭みがない。
本カワハギは地つき魚だが、
ウマズラは外遊魚であるセイか、広い海を走り回る。
排水などの汚れた海域から離れた場所で暮らしている。
ゆえに、
肝に臭みがない。
ピンク色で、ストレスの跡がない!
(鯛やヒラメなどの上司に叱られた跡がない)
さあ、ここまで褒めたからには、問題のお値段だ。
なんと、本カワハギの、
3分の1。
こんないい奴が、船上でうとまれているのですゾ。
「けっ、ウマズラかよ」
私が拵えたウマズラのふぐ造り