洞窟探検家が、地震を語る。
「僕らが、常日頃、地下洞窟にいるでしょ」
『はい』
「洞窟に潜っている最中、いつか地震が起きるよネ」
『でしょうネ』
「一般の人たちは、それが怖いんだよネ」
『こ・こわいで・・す』
「突然、穴がふさがるとか」
『オエっ』
「天井から岩が落ちてくるとか」
『フンギャっ』
「水が噴出してくるとか」
『ブクブクブク』
「でもね、地下深くの地震は、こんな感じなんだなあ~」
地下の自然空間で何度も、大きな地震にあった探検家が語る。
「あとでネ、『大きな地震があったヨ』と教えてもらえるんだヨ。
でもサ、この地下深い洞窟にいるとネ・・
な~んとなく、ゴ~~と唸りのようなものが響いてきて、
遥か上の方をゴ~~と通り過ぎてゆくんだな。
地下深ければ深いほど、揺れは無いナ。
感覚的には、
揺れは上の方を通っていく気がするナ。
この辺りは、ただ地鳴りが響いているだけで・・」
この証言は興味深い。
《地下深いほど、揺れは少ない》
《揺れは、地上近くを通り過ぎてゆく》
よし、実験してみよう。
ビールなどを注ぐカップグラスを取り出す。
中に、ゼリーを入れ固まらせる。
出来上がったゼリー入りカップを手に持ち、
左右にユラユラ揺する。
するとだ・・・中身は、上部だけが、波打って揺れ、
下部は、さして反応してくれない。
さらに強く揺すると、上部は弾けて壊れてしまった。
地震の実験としては科学的でない、と指摘されそうだが、
311の地震に、地下深くの地下鉄車内で遭遇した私としては、
「確かに・・」
手の平をポンと打ちたくなる。
地上にいた人たちほどの揺れは感じなかった。
洞窟探検家菊地さんの、なにげない証言には重みがあった。
「上の方を通り過ぎて・・・」