石川県に来ると、旅をしているという感覚が鋭くなる。
特に、能登半島。
今は、七尾空港が出来て、
割と簡単に能登半島の先っちょまで、行けるようになったが、
以前は、「これでもか・・これでもか・・」
野を超え山を超え、海岸線をひたすら走った記憶がある。
で、つい口をつく言葉が、
「こんなところまで来てしまった・・」
「こんな」とは、地元の方にとっては、随分失礼な言い方だが、
私的には、褒め言葉である。
「こんなところが、まだ日本に残っていたんだ・・」
このセリフが何度も出てくるあたりが、実に能登らしい。
いまでは有名になった、<白米千枚田>(しらよねせんまいだ)。
以前、そんな場所があるとも知らず、車を走らせていたら、
突然冒頭の写真の風景が現れた。
田んぼの中で、大勢の人達が、何かをしている。
田んぼに緋毛氈を敷き、紋付き袴の男達が、動き回っている。
なんでも、年に一度、ここで、結婚式が行われるのだそうな。
「どうか祝ってあげて下さい」
仲人とおぼしきオイチャンが、すでに鼻を赤く染めている。
祭列は、畦道をしずしずと進んでゆく。
旅の途中ゆえ、長居も出来ず、この田んぼで収穫されたお米を、
買わせて貰い、青空結婚式をあとにした。
振りかえれば、北陸の海原は、
真夏の太陽を浴びて、蒼々と深みを増し、
空の青さをも呑みこんでゆくかのようであった。
(ホラ、旅人は、その気になってる)
ここを過ぎると、もう人は住んでいないという。
(ウソです)
♪~しぃらなぁい~まあぁぁちぃに~♪
ここは、遠い町なのだ。
♪~あ~いすぅるぅひぃぃとぉと、~♪
ん・・?
私の好きな歌、永六輔作詞、中村八大作曲の、
<遠くへ行きたい>を唄ってみた。
♪~愛する人とめぐり逢いたい~♪
この歌詞の所で、立ち止まってしまった。
出会う前に、どうやって愛するんだろう?
めぐり逢うのが先で、愛するのは、その後だよな。
時系列が、逆転している。
ま、いっか、そういう歌詞だもんネ。
♪~どぉこぉかぁ~とおぉぉくぅえ~♪
そう、能登は、今でも
遠いどこかである。
干潮のときに出来る海の道