大菩薩嶺(だいぼさつれい)の峰々と峠郡。
この一帯の山歩きは、下半身にやさしい。
土が軟らかい。
落ち葉が造った土が、ふんわりとしたジュウタン状になっており、
ヒザにとてもやさしい。
登山とは、下りで<ヒザがわらう>という表現をする。
1000mの高度差を下ってくると、
ヒザがくがくとなり、2~3日、使い物にならなくなる。
ところが、登山口から、上日川峠、石丸峠、
大菩薩峠、丸川峠へと至る、縦走路は、
まるで柔らかなジュウタンの上を歩くようだ。
岩場は、頂上の一部だけ。
大菩薩と名前は、重々しいが、実は、
高齢者向きの山である。
おまけに、今は残雪期。
ヒザに良い条件が揃っている。
それでも、ヒザに問題を抱えた場合は、下山したすぐその先に、
このお風呂が待っている。
<大菩薩の湯>
ザブ~~ン
「すみませ~ん、サインいただけますか?」
『ああ、はい、あて名はなんと?』
「
だいぼさつのゆって、書いてください」
『・・・・・・』
この二日間、だいぼさつの文字ばかり、見続けてきた。
山中にある指道標にはその文字が書かれてある。
何度も何度もその文字を見てきた。
恐らく10回や20回は見たと思う。
であれば、その漢字を書けないはずがない。
はずがないと額に手をやるものの、
大の文字を書いてから、しばらく筆が止まってしまった。
はいアナタ、今すぐ横を向いて、
だいぼさつの漢字を書いてみてちょうだい。
アナタだって、ここまで、だいぼさつの漢字を、
4回見ているのだ。
さ、自分の記憶力を試してみよう!