ギクッ・・
目が覚めた・・
「乗り過ごした・・・・」
電車通勤をしている。
家に帰る夜だ。
いつもの路線で、いつもの車両の、
いつもの座席で居眠りしている・・
のならば・・問題はない。
今夜は、イレギュラーだった。
宴会の帰りだった。
お酒がふんだんに入っていた。
眠かった。
つい、ウトウトした。
だがネ、多少ウトウトしたところで、
乗り過ごす様な過ちを起こす
通勤プロではない!
「
通勤プロを舐めんなヨ」
その通勤プロが、乗り過ごすこともある。
では、乗り過ごす瞬間に注目してみよう。
プロは、眠りながらも、
音に敏感になっている。
アナウンス音、降りてゆく客のざわめき。
様々な音で、どの駅なのか、眠りながら理解している。
「まだ、みっつ前の駅だにゃ、ふぇ・・」
そして、肝腎の自分が降りる駅を過ぎた瞬間だ。
(ん・・なにかが違ぅ・・窓の外が違ぅ・・
この違和感は何だ・・・?)
<違和感>だ!
眠っていた筈の人間が、まなこをデロ~ンと開けながら、
「コレは違う!」と目覚めるのは、
違和感である。
原因は、音だろうか?
薄目で見ていたかもしれない車窓に見える建造物だろうか?
いつもと違う車内風景だろうか?
違和感を覚えて、ガバっと起きる。
「乗り過ごした・・・」
ところが通勤プロは、乗り過ごしても、おたおたしない。
(ふん、けったくそ悪い・・)
居直っている。
(ちょいと遠回りしてみたのサ)
次の駅で、階段を登って反対のホームに行かねばならぬ。
(それぐらいの事・・ヘッ!)
乗り過ごしという、他の誰のセイでもない失敗を、
どうしても失敗と認めたくないのが、プロである。
(イチローだって、3回に2回は失敗してんだゼ)
まったく意味のない理由付けをしながら、
ヨタヨタと階段を登っている通勤プロであった。