大阪に、<なんば>という街がある。
難波と書くのだが、なんばの方が通りが良い。
大阪の方に、この話をすると、
「なにをわざわざ、なんばの説明してんねん」
叱られる。
なんばは南(みなみ)にある。
大阪は大きく分けると、北(きた)と南(みなみ)に分れており、
方角を表わす、南ではなく、固有名詞として、
みなみと言う。
アクセントは、<な>ではなく、<み>を強調する。
「
みなみ、飲みに行きまひょか」
なんて、使い方をする。
「今夜、
みなみ遊び行かはったらええやん」
などとも使う。
なんばには、吉本新喜劇の劇場、<なんばグランド花月>がある。
いわゆるNGK。
新喜劇観て、漫才笑って、落語聞いて、コントでしばかれて、
4000円である。
生で観ると、椅子から転げ落ちて笑ってしまう。
土日でも4500円だ。
チケットはいつも完売である。
そのNGKには、我々役者は、まず立てない。
国立劇場に立てても、NGKの舞台に立つのは難しい。
その舞台に数年前、ひょっこり立ってしまった。
後藤ひろひと作演出の芝居をNGKでやった。
座長の内場勝則さんや、めだかさん、花ちゃん、未知やすえさん、
末成由美さん,安尾くんなど、
憧れの新喜劇の方達に囲まれての舞台は、
非常に新鮮で面白かった。
実は、新喜劇には独特の登場方法がある。
<出音(でおと)>
ある役者が初めて登場する際、
チャララ~~ンと音楽が鳴るのである。
お客は、拍手で迎える。
その出音が、私の初登場の時、鳴らなかった。
なぜか?
こっそり登場したからである。
部屋の中で電話をしている内場勝則さんの背後から、
そおっと出て来たものだから、出音を鳴らせなかった。
だから客も、
拍手をすると内場さんに気付かれてしまうので、
手が宙で浮いてしまった。
これは、これで、悔しい。
NGKの舞台に出音で登場したとなったら、
関東以北の方には、ピンと来ないだろうが、
関西圏では、自慢できるおおごとなのだ。
「ほな今度、みなみのカゲツいきましょか?」