時折、アジが無性に見たくなる。
それも、
生きている鯵を、たまらなく見たくなる。
この衝動をかなえる為に、釣りに出かける。
出かける先は、東京湾だ。
走水(はしりみず)と読む場所だ。
25年通っている、釣り宿<広川丸>におじゃまする。
「来ましたァ~」
「釣りましたァ~」
4時間の釣りで、26匹のアジの
生きている姿を見た。
彼らは、美しかった。
一匹一匹、皆が光り輝いていた。
ピチピチという言葉を、惜しげもなく使えるアジ。
「惚れちゃダメよ」
アジは、ささやいてくれている。
しかし、アジは、釣り人が惚れる対象ナンバーワンだ。
なんたって、お馬鹿ちゃんだ。
誰でも釣れる。
すぐに釣れる。
たくさん釣れる。
日持ちする。
しかも、美味しい。
いいとこだらけのアジである。
さっき、26匹釣れたと言った。
当日食べられない分は、
一夜干しにする。
君らが、私の骨になり、筋肉になり・・
ぜ~んぶ食べてあげるから、成仏しな!