コレは、大分の関サバの刺身の盛り合わせである。
盛り合わせったって、関サバしか乗っていない。
あとは、装飾である。
日本の刺身の装飾技術は、優れている。
本体の刺身の量はさほどでないのに、
たくさんの量が美味しそうに存在しているかのように、
見せかけている。
あくまで見せかけであるにも拘わらず、
見せかけてくれた板前さんの所業を褒めてしまう。
「おぉ~見事だぁ~」
「美味しそう~」
「値段だけのことはあるなぁ~」
さて、板前さんのワザに使われている物体は、ツマと呼ばれる。
ダイコンの千切りは勿論、ツマなのだが、
その他も、ツマと呼んでいい。
例えば、
海藻。
緑の海藻と紅色の海藻がある。
食べてみるが、さして美味しくない。
わざと美味しくない海藻を選んで、
食べられないように画策しているのかもしれない。
例えば、
オオバ。
シソの葉っぱなのだが、毒消しの役目も果たしている。
その花が咲きかかった実も添えられていたりする。
パ~ンと叩いて、実をつぶして食べたりする。
パ~ンの音に反応して、従業員がやってきたりする。
「お呼びでしょうか?」
例えば、
キュウリ。
なぜか刺身の横に、キュウリが、
化粧切りされて飾りとして参加している。
どんな料理にも参加したがるポリシーのない奴だ。
例えば、
ニンジン。
こいつは、キュウリと並んで、緑と赤という色どりだけで、
選ばれた素材だろう。
栄養だとは、とても思えない。
例えば、
菊の花。
緑、赤とくれば、あとは黄色だろうってんで、
菊の花が登場する。
勿論、菊には、除虫菊と言われるほど虫よけ効果がある。
しかし、菊を入れると、
主役の刺身の立場を奪ってしまいかねない。
気を付けたほうがいい。
例えば、
ワカメ。
「刺身食って酒ばかり呑んでいると栄養が偏り、頭、禿げるヨ」
ドキッ
こんな不安にかられた時、目の前にワカメがあると安心する。
こればかりは、もっとたくさん盛って欲しいものだ。
例えば、
レモン。
レモンかあ~?
私的には、いらないんだけどなあ~
せっかくの刺身に、レモンの味が染みついたりするんだなあ~
レモンには他の場所で、その力を発揮して貰いたい。
例えば、
木の枝。
季節感を出すためだろうか・・
モミジだの春草だの、あしらってある。
皿の上は、さながら生け花だ。
流派があってもおかしくない。
そして、お刺身をぜ~んぶ食べ終わった私のお皿の上には、
まるで古戦場のように、
レモンの皮と木の枝だけが残っているのだった。