時折、その地方にしか存在しない魚と出会う。
この魚、有明海の砂地にしかいない。
《エツ》
やや泥っぽい海底、すなわちムツゴロウが居る場所に、
同居しているらしい。
分類は、<カタクチイワシ科>だそうだ。
形が変である。
尻尾に向かって極端に尖っている。
刺身にするには、身が少なそうだ。
小骨も多い。
そこで、地元の人は、<背ごし>にして食べる。
背ごしとは、アユなどを食べる時のように、
骨ごとザクザク切ってしまうのである。
食べてみた。
なるほど生息地が泥地であることがすぐに分かる。
泥の香りがほんのりとする。
でも、イヤな感じではない。
むしろ、自然を生き抜いてきた結晶のような力を感じる。
歯ごたえはすこぶる良い。
数切れ口中に放り込み、日本酒をチビリとやる。
さらに味わいが増した。
夏の夕暮れ・・
《エツ》に舌鼓を打ちながら、悦にいっている。
(あ~あ、やっぱり言ったか)
エツの背ごし