この2枚の写真は、
<ヤマセ>が発生した瞬間を捉えたものだ。
ヤマセとは、東北地方で夏に起こる現象である。
冷害の原因になっているイヤなやつだ。
三陸の北リアス線の車窓からカメラをのぞいていると、
何やらモヤモヤした霧が盛りあがってきた。
「何だろう?」、窓を押し上げた途端、
ヒンヤリした風に体を包まれた。
真夏だというのに、ガンガン冷房を利かしたような冷風が、
車内に流れ込む。
「ヤマセじゃな」
地元とおぼしき爺様が仰る。
この時、午前10時。
このモヤは、一時間ほどして消えた。
どこへ消えたのか?
実は消えたのではないらしい。
海で発生したこの冷たい空気は、西へと向かったのだ。
岩手県の内陸部へと向かい、さらには、秋田県を通り過ぎ、
日本海へと吹き抜ける。
そういえば・・・
14年ほど前・・
青森県の十三湖に、
ウインドサーフィンで遊びに行ったことがあった。
真夏に強風が吹くことで知られていた。
ウインドサーファーにとっては嬉しい限りなのだが、
地元の方にとっては、冷害を呼ぶ忌み嫌われる風なのだ。
風速10mを超える風が、太平洋から、
みちのくの山々を超えて、日本海に届く。
下がった気温は、作物に致命的な影響を及ぼす。
先ほどの爺様が、窓を下ろしながらつぶやく。
「冬はえらい寒いだぁで、夏くらい汗流したいわなぇ」
水門の上に列車が?