先日、カツオに逃げる話をした。
困った時は、カツオを買えば、晩酌に困らない話だ。
そのセイで、サバを裏切り、
ワラサに仁義を破り、
それでも、カツオの旨さに、酔いしれている私だった。
だったと言ったが、実は、違う。
秋は違う。
今は、秋だ。
秋と云えば・・・サンマ(秋刀魚)じゃないか!
昨日、魚屋の店頭で、固まった私がいた。
目の前にある、サンマから目が離れないのだ。
フリーズ!
サンマにフリーズしたまま、時が流れた。
はっと気付くと、
自宅の台所で、包丁を握っている私がいる。
セッセとサンマを捌いている。
今日、大切な事に気付いた。
サンマとは、あまたいる魚の中で、
食べられる為に、
《自らを料理しながら生きている魚》
なのだ!
つまり、サンマは、
釣られた時、すでに、調理済みの魚である。
調理しなくても、ただ捌いただけで、
凄まじい旨味を持っている。
っと、ここで、魚の旨味の話をちょいと・・
鯛だのヒラメだの、
非常に微細な旨味を、我々は享受している。
淡い旨味に、舌鼓を打っている。
牛や豚の肉類に比べれば、
あまりにも、
ほのかな旨味かもしれない。
さあ、その中で・・
サンマとは、牛豚鶏と対決して差し支えない、
はっきりとした甘みを、その身に蓄えているのだ。
ほんの小さな刺身の小片を、口に入れただけで、
ホワ~~~ン
快感が秋の空にこだまする。
「大袈裟じゃないですか?」
いえいえ、この濃厚な旨味はサンマしか持ち得ない!
申し分けない。
秋だけは、サバにも、ワラサにも、カツオにも、
裃(かみしも)脱いで貰って、
サンマ様に、上座を譲って頂きたい。
サンマは、海の中で育ちながら、
自らを料理していたのだ。
他の魚のように、調理する必要がないのだ。
ゆえに、サンマの水揚げをこう呼びたい。
《
泳ぐメニュー》
サンマのナメロウ