ラムはやっかいだ。
羊肉は旨い!
旨いのだが、自宅の室内で焼くのは、やっかいだ。
肉類は焼くと、みな煙を発する。
その中でも、羊だけは、その煙の中に、匂いを引き連れる。
室内のあらゆるモノに匂いを付けてゆく。
いったん付いた匂いは、そう簡単に取れない。
獣臭が、椅子にも、壁にも、床にも染み付く。
私的には、染み付いても構わないのだが、
「うわっ、臭っ!」
訪ねてきた友人は、鼻を押さえる。
それでも、私は、ラムを食いたい。
無性に食いたくなる。
夏には、モトス湖キャンプ場で、ラムを食っている。
その夏が過ぎ去ると、ラム離れが始まる。
煙問題で、ラムと離れ離れになる。
いとしいラムと別れを告げる。
かなしい・・・
そっか!
いとも簡単に、ラムを食べる方法が浮かんだ。
《駐車場で、キャンプをする》
そう云えば・・
その昔、我が父親が、羊肉が好きだった。
どこかからマトン(ラムの親)を買ってきた。
一度に、2キロもの肉塊を、台所にドサリと落とした。
「さあ、食うぞ!」
七輪に火をつけ、
駐車場に家族の輪をつくった。
「好きなだけ食えヨ!」
肉そのものが貴重な時代に、腹ペコの僕らの体に、
ラムの父親マトンが吸い込まれた。
10代の私の腹に、600グラムを超える肉塊が、
ドサドサ放り込まれる。
毎週末、駐車場で繰り広げられる、
楽しい、肉体改造の饗宴であった。