私の、≪初物驚かせ≫は、いまだ健在である。
私は、初物に強い。
初めて体験するスポーツだの、手芸だの、伝統伎だのに強い。
当然、教えてくれるマスターから、疑問の声が挙がる。
「は~ん、アナタ随分やってた人だネ」
こんな言葉を、何度も何度もかけられた私が、
最近、目覚めた。
「よし、いなおってやろう!
こんな人間もいるんだ!」
何かを初体験した時に、その日に、いやその時に、とりあえず、
≪すぐに出来る人間がいるかもしれない≫
先日、50年ぶりに、ケンダマに触った。
ケンダマとは、あのけん玉だ。
カチカチ音を立て、玉をジャグリングする日本古来の遊びだ。
「非常に難しい技を、教えます」
その道、三段の位を持つエキスパートが、
私に、非常に難しい技を、いきなり教えてくれた。
その5分後・・・私がその技を、成功させた。
しばしの沈黙になる。
・・喝采とはいかない、
どちらかというと、白ける。
みんなが、努力に努力を重ねて、数週間かけて成功するべく技を、
たった5分で、やっちゃった。
・・白ける。
この事実の扱いに、皆が困る。
こういう時、人は、
なかった事にしようとする。
それが出来ない時は、あったけども特殊なケースだから、
やっぱりなかった事にしようとする。
大阪弁的には、「ありえへん」
この一言で、済まそうとする。
この話をすると、必ず言われる。
「イシマルさん、自慢してるんですか?」
では、それに返事しよう。
「恐らく、私以上に出来る人がいる。とんでもない人がいる。
そんな人たちが、スポーツあるいは、匠の世界で、活躍している。
彼らは、私なんぞが束になっても敵わないのだ。
だからこそ、感動を生むシーンを魅せてくれるのだ!」
なかなか渡れない踏切の真ん中で固まってしまう