コレは、<爪楊枝立て>である。
レストランのテーブルに置いてある。
誰でも見たことがある。
そして何の疑問も抱かず、食事後に、この爪楊枝を取る。
一本、取ろうとする。
ここで、問題が発生する。
アナタに訊きたい。
これまで、この爪楊枝を一本取ろうとして、
そいつが素直に一本、出てきた事がありましたか?
この爪楊枝立てを、よ~く観察してみよう。
小さな瓶に、20本以上の爪楊枝が収められている。
それらは、すべて紙袋入りだ。
紙とは、摩擦係数が非常に高い物質である。
一つを持ち上げれば、
その周りの物質がまとわりついてくる性質を持っている。
その通り、この爪楊枝袋も、しかりだ。
一つを摘まもうとすると、その周りの爪楊枝袋が、
我も我もと持ち上がる。
おっと待て、その話の前に、すでに障害があった。
まず、その紙の先端を持ち上げようと、指先で、紙を摘まむ。
しかし!
たいがい
二つ一緒に摘まんでしまうのである。
三つ一緒もよくある。
ちょいとだけ持ち上げ、一つでなかった事実に気づき、
一端おろし、再度持ち上げようとするのだが、
ここで、前述の摩擦問題が発生する。
ズルズルと、周りの爪楊枝の袋まで、持ち上がる。
バラバラバラ
テーブルに散らばる。
店の従業員の方の気持ちもわからんでもない。
なるべく沢山、爪楊枝を、瓶に詰め込んでおきたい。
店のオープン中に、追い詰めをしたくないからだ。
「あらら、あらら」
アチコチのテーブルで、
こぼれた爪楊枝袋の再投入シーンが展開されている。
あぶれた爪楊枝を、元に戻しているのだ。
これが簡単なようで、うまくいかない。
オジサンは、特にいらだつ。
最初は、片手で入れなおしていたオジサンが、
やがて両手で、ボロボロ格闘し、
「ええい、全部持って帰ってやる!」
こぼれた分を、ポケットにしまっている。
厳密にいえば、泥棒だ。
《爪楊枝泥棒》
もし捕まったとしたら、弁明するのだろうか?
「以前から、どうしても一度に一本だけ取り出せなくてネェ~」