雪山に行く。
真っ白な雪原に、足跡がついている。
人ではない。
なんだろう?
二つの窪みの前に、縦にふたつ窪みが並んでいれば、それは、
ウサギだ。
ウサギが、ピョンピョン跳ねてゆく様がわかる。
歩幅が長ければ、走って逃げている様子も想像できる。
小さな、足跡が、規則正しく、4つ窪んでいるのは、
キツネ系の小動物だ。
それらも、歩幅次第で、歩いているのか走っているのかが分かる。
深く沈んだ大きな足跡は、鹿である。
カモシカかもしれない。
実は、この足跡は、役に立つ。
我ら、雪原を歩いている内は、問題ない。
谷を渡る時に危険が潜んでいる。
谷を渡るとは、川を横切るという意味だ。
川には、大きな岩石がゴロゴロしている筈だ。
実際、夏になれば、その岩の周りを水がゴウゴウと流れている。
そのすべてが、雪で覆われ、どこが岩だか、窪みだか分からなくなる。
もし万が一、窪みに足を踏み出した場合、自らの重みで、
ズボッ
川に落ちる可能性がある。
そこで、登場するのが、鹿の足跡だ。
人間とさほど個体重が変わらない鹿は、どういう訳か、
岩のある場所が分かるらしい。
音なのか?臭いなのか?
見事に、落ちることなく歩いて渡ってゆく。
そこで、我々は、そのルートを利用させて貰うのである。
昨日、鹿を喰らう話をしたばかりなのに、
随分身勝手な私であるが、ここは一つ、鹿のケツを追いかけてやろう。
すると時折・・・
足跡が、無くなるのだ!
ど・どういうこと?
辺りを見回すと、はるか向こうに、足跡が再び出現している。
「ふ~~ん、跳んだのネ、アンタ
すごいね、いっぱい跳べて・・
人間はなあ・・人間はなあ・・橋を架けられるんだゾォ~!」