小説を読んでいる。
夜も更けた。
文庫本をグルリと折り曲げ、すでに大団円に近づいている。
あと10数ページ読み進めば、物語は終わる。
この状態で、私は、ベッドでその文庫本を握っている。
ここが、大きな分岐点となる。
《このまま、最後まで読み、眠る》
《この先を、読まないで眠る》
二つの道がある。
その二つの違いは何だろうか?
つまり、物語の最終の結果を知って眠るか?
知らないで眠るか?
その違いは、とんでもなく大きい。
今、《眠る》と簡単に表現したが、
実は、それ自体が問題だ。
ここで説を述べよう。
【小説を読み切ってから眠ろうとしても、眠れない】
(あ~面白かった~)
読み終わり、バタンと布団に伏せる。
眠ろうとする。
しかし、瞼は閉じているのだが、頭が冴える。
登場人物のセリフが浮かんだりする。
読後感想が、眠ろうとする私の頭をかけ巡る。
いつまでもいつまでも、主人公が追いかけてきたりする。
【読み切らずに、眠ろうとすれば、すぐに眠れる】
本を、途中で閉じて枕元に置いた。
(この先どうなるのだろう?)
不安と期待で、頭の中がグルグル回る。
このままじゃ、眠れないじゃないか!
天井を見ながら、明日の仕事スケジュールの都合上、
もう眠らなければならない。
あと、数10ページを読む時間の猶予はない。
(でも、気になるなあ~この先)
っと、この瞬間に、意識を失っている。
次は明日になっている。
つまり・・・小説とは・・
読み終えた場合は、眠れない。
読み終えない場合は、すぐに眠れる。