お宅に、ジュースミキサーって、あります?
リンゴだの果物を適当に放り込んで、スイッチを入れると、
ガーガー鳴って、ジュースが出来るアレです。
我が家にあるアレが、実は、問題だったのだ。
最近買ったにも拘わらず、
ガーガーやってくれたにも拘わらず、
ツブツブが残るのだ。
ドロドロまで細かくしてくれないのだ。
回転する歯の問題なのか?
買い求めた値段の問題なのか?
だからと云って、すぐに買い替えるほどの気力はない。
買ったばかりの器械を買い替える勇気も、気概もない。
だけど・・・
「この中途半端な力しかない機械と、
こののち10年は付き合っていくのだろうか?」
憂鬱な想いを抱いていた・・
っと、突然、台所で大きな大きな音響が響いた。
ガラスの割れる音だ。
駆けつけると、滝田くんが、茫然と床を見つめている。
「どったの?」
『ミキサーが割れた・・』
台所の洗い物をしていた滝田くん。
ミキサーが割れたと、ベソをかいている。
この時、私の頭の上に、閃きの電球が点った!
(おっ、滝田くんはわざと割ったナ)
私が最近、このミキサーを嫌っている心境をおもんぱかり、
割ってやろうと決断したのだナ。
友人想いのいい奴である。
しかして、割ったのだが、言い訳を思いつかなければならない。
私が駆けつける前に、とっさに言い訳を考えた。
考えた割には、標準形だった。
『フライパンが倒れてきたんだヨ』
ゴキブリにびっくりしたとか、電子レンジが破裂したとか、
キツネと目が合ったとか・・・
他に言いようがあったろうに、
『フライパン~』などと、
ありふれた言い訳ですますつもりだ。
「いいからいいから、ガラス片付けよう、怪我してない?」
すると、ガラスを拾いながら滝田くん・・
『おかしいなぁ~フライパンがさぁ~』
あくまでフライパンに責任をなすりつけている。
わざと割ったとは、頑として認めないらしい。
私の為に割ったとは、口が裂けても言いたくないらしい。
うむ、いい奴である。
『フライパンてさぁ~』