「アレは怖かったネ」
滝田くんが、私に連れていかれた体験を怖かったと述懐する。
では、そのワースト3を紹介しよう。
《蓼科山登山》
秋、二人で、登山口から歩き出した。
なぜか、その日、私の舌は饒舌だった。
登っている時も、下っている時も、なめらかに回った。
回りすぎて、たびたび道をロストした。
何度か道を戻り、時間を無駄にした。
秋の夕陽は、つるべ落としと言われる。
頂上を落とした時には、お日さまは地平線に近づいていた。
慌てて駆けおりる我ら。
しかし、落とす速さは、太陽の方が圧倒的に速い。
日没サスペンデッド。
真っ暗な山中を、さまよった。
灯りは、微かに光を放つランプ。
後ろから付いてくる滝田くんの背中側が真っ暗!
『ねえ、帰り付かなかったら、どうなるの?』
「森で眠る」
『
ヒエ~~~~』
《谷川岳グリセード》
芝倉沢雪渓を麓から遡り、頂上まで達したら、
その雪渓を、棒一本で、滑って降りるのである。
グリセードというテクニックだ。
アイゼンを外し、登山靴のまま、滑る。
急斜面の残雪の時につかうテクニックだ。
棒は、長さ1mほどの木の棒。
「さあ、滑るゾ!」
頂上で、グリセード初めての滝田くんに声をかける。
『この急斜面、40度超えてない?』
「だからグリセードで降りるんだヨ」
『クレパスがアチコチ穴あけてたよネ』
「登るとき、場所を確認しただろ」
『雪崩の跡があったけど・・・』
「つべこべ言ってないで、さ、いくぞ!」
ザ~~~~~
『
ヒエ~~~~~~』
《西沢渓谷》
まだ残雪がたっぷり残っていた渓谷に、二人は足を踏み入れた。
あとで分かったのだが、立ち入り禁止の看板があったらしい。
その後半である。
夏場は快適な散歩道となるトロッコ跡の道が・・・
春先のこの日、吹き溜まった雪で覆われていた。
雪は斜めに溜まっている。
溜まってコチコチに固まっている。
つまり斜めの氷のすべり台が幅広く続いている。
右から左に傾いている。
左端の下は、まっすぐ谷底におちる絶壁だ。
100mほどの落差がある。
「滝田くん、軽アイゼンを履こう」
その辺の木の枝を拾い杖とした。
杖を氷に突き立ててみるが、歯が立たない。
「一人づつ渡ろう」
『なんで?』
「もしどちらかが落ちたら、連絡する人が必要だろ」
ヒエ~~~~~~~~~~~~~~~~~~《遭難ってか?》2013年;11月8日
《グリセードチャレンジ⑤》2011年;6月2日
《西沢渓谷 再チャレンジ》2014年;4月17日