この季節、田舎では、カエルの鳴き声が、かまびすしい。
風物詩とうそぶくのは簡単だが、はっきり言って、うるさい。
寝付けない夜などは、そのうるささに苛立つ。
「なんだヨお前たち、昼間にあれほど鳴いていたのだから、
夜も鳴くなヨ!」
つい小言を言いたくなる。
気になるのは、
夜の鳴き方だ。
ゲ~コゲ~コ
何百匹というカエルが大合唱をしている。
男子が女子を引き付ける為に鳴いているらしい。
ゲ~コゲ~コ
大合唱が、十数分続く。
そんな時だ・・・
<突然、大合唱が止む>
文字通り、突然止む。
止むのに要する時間は、一秒ほどだ。
ピタリという言葉がピッタリである。
当然、あたりは、シ~ンと静かになる。
静かな時間は、3~5分ほど続く。
そして、再び、大合唱が始まる。
始まる時も、瞬時だ。
瞬時だが、ピタリと止む時ほど、瞬時ではない。
ここで、腕を組みたい。
あのピタリは、何だろう?
敵が近寄ってきたのだろうか?
良からぬ大きな音が聞こえたのだろうか?
それとも、鳴く体力の限界が、時間的に襲ってくるのだろうか?
もしそうだとしても、全員が同時にピタリ!
あの小気味の良いタイミングは何だろう?
海の中で、イワシなどの小魚の大群が、一糸乱れぬ動きをする。
アッチ向いたり、コッチ振り返ったり・・
まるで、センサーを体内に持っているかのような集団の動き。
ひょっとすると、カエルも、
集団的な、何かを持っているのだろうか?
小学校の体育館で、
大騒ぎしている子供たちを黙らせるのは至難だと聞く。
では、カエルは、なぜ、集団で黙るのだろう?
知っている限りでは、日本中のカエルは皆、突然黙る。
一匹だけでも、オレだけはと、鳴き続けるヤツはいない。
女子を惹きつけるのであれば、皆と違う行動をとればいいのに、
ピタリに従う。
カエルの突然の沈黙・・・ナゾだ。