「つった、つった、足つった・・」
夜中に「足がつった」と騒いでいる。
ホテルのベッドの上で、ふくらはぎが突然つる。
足がつると、人は、語彙が極端に少なくなる。
誰もが、「つった」これだけを発する。
せいぜい「足つった」と足が付属する程度だ。
その合間に、「痛タタタタタ・・」
基本形は、
「つったつったつったつったつったつったつたつたつた」
つったの連呼である。
これは、パニクっている証拠だ。
つる歴史は長い。
子供の頃から、頻繁に足はつる。
つると、叫ぶ。
「つったつったつった!」
すると、父親か母親がやってきて、足を伸ばしてくれる。
やがて、大きくなると、友人など自分の周りにいる人が、
やはり、足を伸ばしてくれる。
「つった」と叫べば、
誰かが足を伸ばしてくれる治療習慣が身に付いた。
昨日の夜は、ホテルの一室だった。
誰も賛助の人間がいなかった。
すると、私は、どうしただろうか?
パニクっているのに、言葉を発しなかったのだ。
その代わりに、頭の中で、同じ行為をしていた。
(つったつったつったつったつたつたつたつた・・)
手助けして貰えないものの、(つった)を頭の中で繰り返す。
勿論、(足つった)と<足>も加えていた。
さらに、(いタタタタタタ・・)
すべて無言劇の悶絶だ。
180度、身体を回し、ベッドヘッドのボードに、
足の裏を押し付け、ふくらはぎを伸ばす。
その間も、(つったつったつったつった)
やがて、つりの症状も緩和し、何事もなかったように静かになる。
そこで、やっと、言葉が出るのである。
出た言葉も、コレだった。
「ハア~つったァ~」