こ・これは何だろう?
岩手県の西和賀町(にしわがまち)に、
《ほっとゆだ》駅がある。
ここは、全国でも珍しく、駅に温泉があるのだ。
正確に述べると、駅舎の中に、温泉施設がある。
料金を払えば、だれでも温泉につかれる。
そこまでは、いい。
面白いのは、風呂の壁にあるこの装置だ。
コレは何?
信号のようなモノが湯船の上に設置されている。
上から、青、黄色、赤、と信号さながらだ。
なんだろうコレ?
といぶかりながら、湯船でくつろいでいたところ、
突然、信号が点いた。
つまり・・青。
「ああ~列車の来る、45分前じゃな」
隣で、ツルツルの頭を撫でている爺様が、つぶやく。
『するてぇと、黄色は何ですか?』
「30分前だぁて」
『はいはい、ほんじゃ、赤は?』
「15分前だはぁ」
なるほど、温泉にまみれて長湯していると、乗り遅れるゾと・・
その信号で知らせてくれる訳だ。
なんとも親切極まりない温泉駅である。
列車自体が、さほど来ない駅ならではとも言えるサービスだ。
するってえと・・
「赤ですお客さん、列車きましたですヨ!」
長湯に居眠りしたお客に駅長さんが声をかけるってぇと、
タオルを下腹部に巻き付けたオジサンが、背広カバンを小脇に抱え、
列車にとび込むシーンを見られるのだろうか?