メバルである。
目が大きく張っているところから付けられた名前だろう。
深海魚でもないのに、目がここまで大きくなるのは、珍しい。
このメバル。
常に水中で、上方を向いて泳いでいる。
泳ぐというよりは、漂っている。
上から落ちてくる餌を待っている生き方を獲得したらしい。
鯛やサバやアジなどは、せわしなく常に泳ぎまわり、
餌を探し回っている。
小魚やエビを追いかけ、パクリとやる。
ところが、メバルは、鯛とさほど違わない風体をしていながら、
ただただ、<待ち>の姿勢を崩さない。
待つのをいとわない性格に、進化の過程で落ち着いたようだ。
「待て」と声を掛けられたイヌに似てなくもない。
しかも、単体でなく、団体で待っている。
タンクを背負って海に潜ると、海草の間で、
彼らが団体待ちをしている光景にお目にかかる。
45度ほどの角度で、全員が上方を向いている姿は、圧巻だ。
空からの光が、メバル達に降り注いでいる。
まるで、神々の世界を見上げている信者のように見えなくもない。
目を見開き、口をポカンと空けている様が、それに拍車をかける。
その光景のバックに、
パイプオルガンの楽曲を流してみたくなる。
海ごと切り取り、表題を付ける。
《メバルの神の降臨》
陽の光の揺れと、パイプオルガンの調べが、
メバルの神様を海中までいざなうような錯覚に陥る。
まさか、ご自分が、非常に美味しい御身を持っているとも知らずに・・・