ふと・・・「いらないTシャツがあるのではないか?」
タンスの前で、腕組みをした。
毎日の、身体を覆う衣服の大部分で、
Tシャツのお世話になっている私だ。
町を歩いていて、ショーウインドーにあるTシャツに目がいき、
つい手に取る私だ。
手に取るという意味は、買い取ると同義語である。
観光地の、《ヨロン》なんてプリントされたTシャツは、
すぐに手を出してしまう。
背中に、<風>なんて書いてあると、
もれなく買い物カゴに放り込まれる。
そうやって溜まったTシャツが、タンスに入りきれずに、
うず高く積まれていた。
いた、と過去形で表現したものの、
いったい、何枚あるのだろうか?
パッと見、100枚は軽く超えている。
150?
200?
ふむ・・・一大決心をする時がきたようだ。
《捨てる》
二の腕をむき出し、やる気を見せた。
捨てるからには、一つ一つのTシャツの判断をしなければならない。
奴らの過去の栄光を考慮しなければならない。
栄光ったって、一瞬だ。
「ああ、あのツライ岩登りで着てた君だネ」
そのひとときの想い出だけで、
タンスの隅っこに生き延びてきたTシャツ。
彼を、
捨てる理由を、ここで、見出さなければならない。
もしくは、
捨てない理由を、紡ぎださなければならない。
それが出来ないのであれば、その貴重と思っているTシャツは、
焼却用のゴミ袋に、もしくは、フリーマーケットに出される袋に、
突っ込まれるべきなのである。
そう・・《服を捨てる》とは、
過去の自分史を、潔く捨てる行為である。
で、さらに分った事なのだが・・・
Tシャツに限らず、
衣服の値段の高い安いは、
時間がたつと、全く関係がなくなるネ。