<焼肉の季節>がやってきた!
「あのねイシマルさん、先日からの水風呂やスイカは許すけんども、
焼肉の季節ってのは、あんまりじゃないノ?」
ふむ、バレたか・・・
先に言っておこう。
焼肉に季節はない。
一年中、食いたい。
実は、先日、洞窟探検家の吉田さんと、
いきつけの焼肉屋にしけこんだのだ。
この焼肉屋は、最近はやりの、無煙だの、
さっぱりだのと言った方向性に目もくれない、
耳も貸さない、昔ながらの、
《ガス式縦隙間鉄板方式》の焼肉屋だ。
背広にネクタイなんて格好がそぐわない店だ。
店に入る前から、
モウモウとした煙が換気扇から溢れ出している店だ。
そのいい匂いたるや、
店の看板がようやく見え始めた信号待ちの歩道ですら、
人々が、鼻をヒクヒクさせられている。
ボッ!
ガス栓を横に曲げ、チャッカマンで、火をつける。
しっかりタレに漬け込んだ肉が乗っけられる。
『当店のタレは、ニンニク臭くありません』などとは、
口が裂けても壁に貼っていない。
むしろ、
ニンニクだけを使用したタレなのだとふれている気がする。
翌日のことなど考えていては、この店のノレンはくぐれない。
明日をも知れぬ覚悟で、ワリバシを割れば、
もうアナタは、めまいのするほどの味を堪能することになる。
そして、目の前には、九死に一生を得たばかりの、
洞窟探検家吉田さんが、ホルモンを頬張っている。
「僕は、ホルモン専門ですヨ」
『うん、僕もホルモンばっかり注文するヨ』
字ヅラでは、どっちが喋ったか分からない会話が続く。
「ホルモンお代わりする?」
『うん、お代わりしよう』
モウモウ~ジュウジュウ~
「そんでそんで、その奈良の山奥の洞窟の潜水はどうなったの?」
さあ、ここからだ・・
吉田さんが、立ち上がり、身振り手振りで、
究極の洞窟探検を語り始めた!
いや、毎度ながらの、生き長がらえる話だ。
地球上が、探索し尽くされ、
『もはや<冒険>は地球上に、存在しえない』
昨今の冒険談義では、必ずこの問題が浮上する。
果たしてそれは・・どうかな?
地球上って・・<上>の字が付いているよネ。
それならば・・
<下>の字が付いている場所があるよネ。
《地下世界》