新田次郎の小説《剱岳 点の記》 つるぎだけ てんのき
立山連峰、剣岳(2999m)に初登頂したのは、
明治40(1907)年、陸軍参謀本部測量隊である。
その実話をもとに、小説化されたのが、点の記だ。
雪と岩に阻まれ、艱難辛苦の末に、頂上に達してみれば、
なんとそこに、錫杖が落ちていた。
つまり、奈良か平安の時代に修験者が登った証拠があったのである。
現代の登山技術をもってしても、困難を極める山に、
いにしえの修験者が、到達していた。
なんとも壮大なドラマではないか!
その測量隊の辿ったルートは、《長次郎谷ルート》と呼ばれている。
立山山麓のガイド、宇治長次郎が測量隊を頂上へ導いたルートだ。
初登頂という名誉は、長次郎谷ルートの発見で、成し遂げられたのだ。
さて、そのルートにこの夏、挑もうというオッサンがいる。
何を隠そう・・私だ。
標高差1000mの雪渓と岸壁である。
一度、チャレンジしてみたかったルートである。
登りの取り付き点までに、すでに一日かかる。
なまじっかの体力では、受け付けてくれないルートとも言える。
今、私は連日、舞台の真最中だ。
山用に筋肉を鍛える山行ができない。
そこでだネ・・
劇場が9階にあるのをいいことに、
リュックに、
30キロの重りを詰め込み、
階段をエンサホイサと、上り降り、10往復。
300mの標高差を、真夏の都会の外階段で実体験しているワケだ。
「本日の最高気温36度です」
ふむ、確かに暑い。
一往復で、シャツがビッショリ。
絞れば、コップ一杯の水が収穫できる。
二報復で、コップ二杯。
ええいなんのその!
いにしえの修験者を見ヨ!
3年前の劔岳では