し・しまった、二日連続行ってしまった。
《立ち食いステーキ屋》
やはり、こういう時は、言葉が必要だ。
「羽目を外した」
300gの肉塊を腹に収めた翌日、
再び、同じモノをに手を出したくなるとは、
我ながら、情けなかった。
大人げなかった。
ゆえに、こうも言い換えよう。
「我を忘れた」
二日連続で通うと、店のオヤジだって、覚えている。
「あ~これはこれは・・今日は、どのお肉を?」
まだ二回目なのに、常連扱いされる。
ちと、恥ずかしい。
二回目ともなると、注文の仕方やシステムを理解している。
『ヒレを、200gで』
控えめに、注文する。
目の前で肉塊をカットしてくれる。
「少し多めになりました・・254gですが、削りますか?」
『はあ、そのままで結構です』
なぜか、多い分には、イヤな感じがしない。
グラムいくらの計算なので、
多ければ多いほど、店は儲かるワケなのだが、
『減らしてくれ』などとは、口から出てこない。
むしろ、量の多い事で、嬉しくなった気分になる。
これは、考えてみれば、おかしな現象だ。
たとえば、スイカ売り場で、同じ値段なら、
少しでも大きなスイカを選ぼうとするのが人の常だ。
ところが、
重さで値段が違えば、大きさにこだわるハズである。
なのに、ステーキになると、
大きい事が幸せ感を倍増させるのである。
グラムと云う量の問題もさることながら、
見た目の大きさが、昂揚感を盛り上げる。
<うず高い>などと云う語感に、酔う自分がいる。
<切り崩す>行為に、我を忘れてしまう。
<ザックリ>という音的副詞に至っては、
気づくと、口から出してしまっている。
「ザックリ!」
そして、いつの日か、
グラムという単位ではなく、
キロの、発声をしてみたい欲求が、ふつふつと湧いてくる。
「いらっしゃいませ、今日は?」
『リブを0・9キロで』
立たせて焼かれる肉塊