わが車の、カーナビにも言い分があるようだ。
聞いてみよう。
「ご主人ネェ、そんなに自分勝手に道を選ぶんでしたら、
どうぞ、御かってにして頂いて結構ですヨ。
せっかく、『右』だと、よそ行きの声まで出して、
案内して差し上げているのに、
ハンドルを左に切るんですもんネ。
『高速道路入口です』との私の声は、全く無視するし、
『左車線をお進みください』と申し上げているにも関わらず、
どうどうと、右車線を走られる。
これって、わざとなさっておられるのでしょうか?
それとも、機械ごときの考えに同意したくないと云う、
反抗でございましょうか?
先日などは、コッチの道の方が、距離は短くなるし、
時間も短縮できる事を発見し、教えようと致しましたら、
いとも簡単にキャンセルなさいました。
それも、私が
教えしようとするや否や、
という寸殺の速さでのキャンセルタッチでした。
確かに、料金は、首都高速を使うために、かかりますが、
いつも早く着きたいというご主人の考えに沿っていたハズです。
そうそう、この間なんざ・・・
途中から、見た事もない高速道路にお乗りになって、
わたしゃ、海の上を走らされたり、山の中突っ切らされたり、
目が回りました。
道が新しく出来たら出来たで、
教えてくれてもいいんじゃございませんか?
何年、ご奉公したとお思いですか?
言っときますが、私ほど忠節で、生真面目で、
面倒見のいい奴はいませんヨ。
それなのに、
『目的地周辺に到着しました、ルート情報を終了いたします』
と丁寧に声掛けした途端、
「最後まで案内しろ!役に立たない奴だ!」
パタンッ!フタを閉じておしまいになりましたネ。
確かに、まだまだ、私には、細部まではよく分からないのです。
なんだか、まだ脳みそが、ぼんやりしていて、
ちっちゃな事柄まで、考えが及びません。
しかし、それを承知で、電源を入れておられるワケですから、
いや、買い求めになられたワケですから、
それなりに、辛坊して欲しいものです。
いつか、私の子孫たちが、
きっとご主人の苛立ちを拭い去ってくれる事でしょう。
それどころか、ご主人の脳みそが、ぼんやりしてきた頃に、
細部の細部まで、突き詰め、
目的地の玄関先まで、お届けする事でしょう。
その頃には、ご主人は、
一言呟けばいいだけになってると思いますですヨ。
「帰るゾ」