「誰か持っていないかなあ?」
《つかこうへい正伝》を出版するにあたって、
著者の長谷川康夫が、あるTシャツを探していた。
37年前の舞台公演、つかこうへい作演出、
<広島に原爆を落とす日>という芝居の際、
作ったTシャツだ。
まだ、自作のTシャツを作って売り出すという事が、
盛んでなかった時代に、役者のイラスト入りを拵えた。
それが見つからない。
誰か持っていないか?
ツテを頼りに探していた。
写真に撮って、本の中で使おうとしたのである。
「イシマル?あいつは持ってる筈ないヨ」
先入観とは恐ろしいもので、
いい加減で、行き当たりばったりのイシマルが、
そんな昔のTシャツを大切にとっておく筈がない。
そういう、固定観念があったらしい。
本造りの時点で、私にお伺いすらなかった。
ところがどっこい!
「あ、持ってるヨ、着てるし」
加藤健一 風間杜夫 平田満