またもや親戚の家の近くで、猪が捕まえられた。
血抜き処理された大きな肉塊が送られてくる。
友人らが集まり、猪鍋とあいなった。
猪の脂は不思議だ。
煮ても煮ても、溶けていかない。
真っ白い脂が、やや濁り色に変色するだけだ。
豚のように、トロトロに溶けるのではなく、
硬く引き締まった脂となる。
こいつに歯を当てると、グギュッと弾力を感じる。
よく噛みしめて呑みこむ。
胃袋に落ちた瞬間から、力が漲る。
野生は旨い。
さて、猪を食した次の夜だ。
「今度は、焼こう!」
猪肉の焼肉に興じた。
ここでも、脂は健在だ。
コリコリ感が倍化する。
野生の猪には、霜降りという発想がない。
赤肉は赤肉の部分に、脂は脂身の部分に・・と区分けして、
配置されている。
よって、脂だけ食べたければ、可能だ。
脂好きな奴が、その快挙に出ようとするが、
周りの仲間の睨みによって、阻止される。
やはり、皆、猪の脂は好きなようだ。
そして、3日目の夜。
まだまだ、肉塊が残っている。
「今夜は、猪スキヤキだぁ~!」
なんと、3日連続で、猪料理となってしまった。
さらに申せば、猪は、スキヤキに良く似合う。
甘醤油に煮締められた肉片。
伸ばす箸がとまらない。
すでに3日目だというのに、我らはまだまだ、猪を愛でている。
こうして、大きかった肉塊が消えた・・胃袋に。
その時、思わず額に手をやった。
「しまった、猪カツを作るのを忘れた!」