《ページをくる》
本を読んでいると、必ずこの行為をする。
この《くる》と云う言葉、そうそう使わない。
お札を数える時でも、使わない。
ではいつ使った?
雨戸!
雨戸はくる。
「タクの窓はシャッターですので、
くりません」
と云うタクさんは、放っておいて、話を進めよう。
「うちゃマンションじゃけ、
くらん」
と云う、じゃけさんも放っておいて、雨戸の話だ。
最近、雨戸をくった事がないという方が増えた。
それはそれで仕方ない。
そんな方に贈る、
今日は、雨戸のくり方教室である。
基本的に、雨戸をくるのは難しくない。
初めての方でもすぐ出来る。
レールに沿って雨戸をずらしていけば良いだけだ。
しかし・・・
難しい難関が最初の段階に待っている。
雨戸と云うからには、雨戸入れがある。
雨戸の収納庫だネ。
《戸袋(とぶくろ)》と呼ばれる。
そこから、アナタは、雨戸を引き出さなくてはならない。
この行為は、非常にややこしい動きを重ねて、
初めて成り立つモノだ。
戸袋から、片手の指先だけを使って、
重さ5キロほどの雨戸を引き出すのは、
実は、熟練の技を使っている。
筋肉的には、ほぼインナーマッスル頼りだ。
心理的には、
汚れた暗い隙間に指を差し入れると云う、
気味悪さの、みぶるいを強いられる。
一枚目は、まだいい。
ただ引っ張り出すだけだから。
二枚目からが、微妙な動きを強いられる。
奥に畳まれている、板を手前に引き寄せなければならない。
指先だけで、コレをおこなう。
その時の力の入れ方を、あえて表現すると・・・
《こじる》
《ひねる》
《なする》
《ひこじる》
特に、このひこじるは、滅多な事では、出現しないワザだ。
今、ロボットの能力の競い合いが盛んだ。
卓球をやったり、キャッチボールをやったり、
ピアノを弾いたり、トンボをきってみたり・・
もし、未来ロボットが、その能力合戦をするならば、
是非、《雨戸開け合戦》をやって貰いたい。
やったあげく、最後には、人間と戦って貰いたい。
人類が、雨戸の開け閉めに、
きわめて優れた能力を発揮している事を、
実証してやろうじゃないか!