山の中の雪道には、車が通ったり、ジェットスキーが走ったりで、
道が踏み固められている。
そこを登山している私が歩いている。
ふと見ると、小さな足跡がある。
どうやら鹿の歩いた跡だ。
鹿も、ズボズボと深く沈む雪よりも、
固くて沈まない雪を選んでいるらしい。
『馬鹿』の片ほうの棒を担いでいるが、それなりの知性はある。
時折、鹿の足跡を人間が辿る時がある。
谷間を渡る際だ。
谷間には、岩がゴロゴロしている。
雪のない季節には、水が流れている。
ところが、冬には、ただの真っ平な雪面が広がるばかりだ。
どこに落とし穴がひそんでいるか分からない。
そんな時は、鹿の足跡が頼りになる。
それなりの体重がある彼らには、落とし穴が分かるらしい。
固い部分が感じられるとみえる。
足跡を丁寧に辿ってついてゆく。
そんな時だ・・・
「アレッここで、消えてる?」
足跡が忽然と消える。
ど、どういう事?
どうやら、ピョンッと跳んだらしい。
慌てて回りを見回すが、足跡が見つからない。
少なくとも、4m以内にはない。
そんなに遠くへ飛翔できるだろうか?
木にでも登ったのだろうか?
それより、谷間に取り残された我々はどうしたらいいの?
ねえねえ鹿くん、どしてココで跳んだりするのかナ?
どこかでボクラを見て、笑っているのかナ?
「ほうら、穴に落ちた落ちたハハハケ~ン」
この足跡はウサギ。