洞窟探検家の吉田さんと私が、話をしている。
《危険回避能力》についてだ。
私のセリフは、「 」で、
吉田さんのセリフは、『 』で表現している。
「交差点で、どこに立ってる?」
『ガードレールのだいぶ後方だネ』
『どっち向いてる?』
「当然、右」
たとえ車が突っ込んできても逃げられる位置に無意識に立っている。
常に頭を右に向け、車の動向を意識している。
「ビル街の歩道歩くときは、どうしてる?」
『常に、空を意識しているネ』
「意識?」
『無意識に、上空を感じているんだヨ』
「歩道のどこ歩く?」
『ビルのギリギリ』
「なぜ?」
『上から人が落ちてくる場合、空力抵抗でビルから離れるでしょ』
「壁が剥がれたら?」
『剥がれたコンクリーも、確率的に少し離れて落ちるナ』
ここで、インタビューアーが吉田さんに代わる。
『イシマルさんネ、車運転中、バックミラーどの位見る?』
「ず~と、見てる。パーセントで云えば、30くらい」
『後ろの車の車種分かる?』
「後ろとその後ろまで、車種分かる」
『運転手は?』
「男か女か、年齢まで見てる」
『同乗者は?』
「助手席に誰かいるのか?子供か犬がいるのか?見てる」
『いつも?』
「いつも見てる」
『高速道路でも?』
「もちろん」
『ナンバーは見てる?』
「見てる。ナンバーで分かる事もある」
『たとえば?』
「連番だの足した数だのに意味があると、運転手の気質が分かる」
『信号で停まった時、どうする?』
「必ず、ギアをパーキングに入れる」
再び、私がインタビューをする。
「道路を渡る時、右を見て、左をみて、もう一度右を見て渡る?」
『甘いネ、さらにもう一度右左を見て、後ろも見て、渡るナ』
「駅のホームでは、どこにいる?」
『間違っても、最前列にはいないヨ』
「もし、崩れそうな橋があったら、どうする?」
『使わない。下まで降りて川を渡るか、自分で橋をかけるネ』
こんな吉田さんだが、先の全く分からない、
未知の狭い洞窟に入りこんでいったりする。
「怖くないの?」
『怖いヨ』
「勇気があるんだ」
『いや、勇気じゃない・・
好奇心だヨ』
「で、冒険家と探検家はどう違うの?」
『探検家はネ、考えうる限りの細心の注意と準備をして、
未知のモノにのぞむんだネ』
「冒険家は?」
『それはネ、考えられる限りの細心の注意と準備をして、
最後に、
少しだけ足を踏み出すんだネ』