酒は手酌で呑みたい。
ビールにしろ、日本酒にしろ、ワインにしろ、
出来ることなら、人に注がれたくない。
なぜか?
呑んだ量が分からなくなるからである。
「カンパ~イ!」
ビールの乾杯が、終わると、すぐに瓶を持って、注ぎにくる。
コップにまだ半分残っているというのに、
「サ、サ、どうぞ」
ビールは継ぎ足したらおいしくないと教わったはずだが、
その教えはどうなったのだろうか?
大勢で呑む時にその教えは、無視されるらしい。
『ごめん、自分で手酌でやるから・・』
「そうですか、それでは、手酌で」
あっさり納得してくれる。
その5分後。
「サ、サ、グイッと」
ビール瓶が差し出され、あけろと促している。
手酌の話は、通っていなかったようだ。
『あっ、自分でやります』
「ああ、はいはい」
引き下がり方はすばやい。
その5分後。
「日本酒でしたよね、サッどうぞ」
『日本酒も、自分でやります』
「はいはい」
その5分後。
「おお~いける口ですね、サッどうぞ」
『え~と、自分で』
5分後 。
「グイッといきましょう!」
『いや、ゆっくり・・自分で』
1時間後。
注がれ続けてしまっている私のグラスがある。
いったい何杯、何合呑んだのか分からない。
『自分で』のセリフを繰り返し続けたにも拘わらず、
風のように流されてしまった。
どうしても注ぎたい人がいる。
その反対に、どうしても注がれたくない人もいるのだ。
だったら、一人で呑んでいればいいのだが、
そうもいかない。
いつ見ても、
満タンに見えるトリックグラスを、
作って貰えないものだろうか?
鯖〆ました