《キンキ》
紅くて、腹がやや白い魚。
しばしば、キンメと間違われる魚。
身体はさして大きくない。
20~30センチほどの身長でヨシとしている魚だ。
煮つけると、満塁ホームランをかっとばす魚だ。
居酒屋で、
キンキの煮つけは、壁のお品書きの右端に貼ってある。
値段もはる。
注文すると、「お時間いただきますが・・」と女将さん。
頻繁に出るメニューでないので、
毎度、注文を受けてから煮つける。
やがて、お時間がたってから、香り豊かに、
赤茶けた煮つけが運ばれてくる。
腹の辺りが、金色にひかり、脂が満々てプックラしている。
当然、箸はそこに突き刺させてもらう。
ブスリ
湯気がふきあがる。
トロトロの身を持ちあげ、舌にのっける。
(あぁ~もうどうなってもいい・・・)
居酒屋で、バタリと倒れ込む訳にもいかないので、
目をつぶって、感激にふけっているだけだが、
自宅の食卓で、キンキの煮つけを一口やった日には、
座卓から横に、バタリと倒れ込むことも、ままある。
家人に見つかったら、食中毒にでもなったかと疑われかねない。
二口目も、まだ溜息が出つづける。
5口目あたりになって、やっと平常心が戻ってくる。
つまり、我に返る。
我に返って、周りを見渡すと、仲間と来ていたことを思い出す。
「え~とぉ、さ、食べよう」
皆の目が、三角になっていた。