《八角》 はっかく
始めてこの魚に出会ったのは、北海道の小樽だった。
「輪切りにすると八角形」との説明を受けたのは、
町の食堂だった。
「刺身で食べる?それとも、焼く?」
オイチャンの薦めに、
『両方!』
料理が出てくるまでの時間が、ドキドキだった。
なんせ、南国生まれの私には、見たこともない怖い魚だ。
見た目は、ドラゴン。
タツノオトシゴが、尻尾を丸めずに、
姿勢を正し、直立している姿と思えばいい。
「はいどうぞ」
小樽で出された八角の刺身。
見たこともないほど真っ白。
刺身醤油の皿に浸した途端、脂がジュワ~ンと滲んだ。
「はい、どうぞ」
焼いて出された八角。
その身を箸で摘まんだ途端、ブシュッと、
脂湯気が吹き出した。
わが身を八角形にしなけばならない程、過酷な環境に暮らし、
わが身を殆ど脂身に仕上げる程の、寒さの中で暮らす八角。
魚界の中でアナタは、極端に異端です。