《ズワイガニ甲羅》
なんと、カニの甲羅だけを売っている。
中身は無い。
なんの為に?
北海道旅行をした方なら、すぐに答えが出てくる。
《カニの甲羅揚げ》
甲羅の中に、グラタンを詰め、油で揚げるのである。
もしくは、グリルで焼く。
香ばしくて、たまらなく美味しい。
30年ほど前、北海道で初めて食べた時は、感激しきりだった。
注文したのは、居酒屋だ。
出された甲羅の中身をナメルように食い尽くし、
やがて、外側のパリパリした甲羅に目がいった。
(コレも食えるよナ・・・)
口に入れてみた。
バリバリバリ、歯と歯の間に刺さりながら、
甲羅は砕かれてゆく。
気づいたら、物体は無くなっていた。
残ったのは、陶器の皿だけだ。
しばらくして、店員が皿を片付けにきた。
皿を手にした途端、店員の目にクエスチョンマークが点った。
その目が、ジロリと私の顔に向いてくるなり、こう言っている。
(たしかこの皿は、甲羅揚げ用だよナ?)
まさか、甲羅の二次使用はないとは思うのだが・・・
一応、ウツワとしての利用で甲羅を仕入れている店側としては、
その
ウツワを食われる場合の対応は考慮していなかったようだ。
去りながら、店員の背中が語っている。
(こいつは、皿を食ったのか・・・?)
レジでも何も言われなかった。
その後、北海道の店では、
確信犯のように、甲羅揚げは、丸まま食わせてもらった。
そして、先日、甲羅そのものが
単体で売られる物体である事が、
築地市場で判明した。
値段はさだかでなかったものの、
高くはないだろうが、安くもないだろう。