《アンコウ》である。
鮟鱇などと書いてもいる。
魚界の、ブサイク系の代表と言える。
いや、突出している。
可愛げが全くない。
上目遣いの下唇突き出しの、最悪の顔つきだ。
もし・・・
アンコウが、いにしえから捕獲もされず、食べられもせず、
今の時代になって、深海魚として、日の目を見たとしたら・・
非常に残念なテレビ報道になったのではないか。
マイクを持った女性アナウンサーの額には、シワが寄っている。
「とんでもない深海の生物が見つかりました。
自らの頭の上に提灯をヒラヒラさせ、
餌となる小魚を捕獲するという、驚きの生物です。
恐らく、魚と思われますが、
正直言って、かなりグロテスクと言わざるをえません!
捕らえられたものの、食料となりえる筈もなく、
打ち捨てられました!」
アンコウの悲しさは、その顔面がすべてを表している。
残念なことに、人間の顔に似ている。
一言でいえば、
「
ぶうたれている」
夕方から、呑み屋で過ごしたオジサンが、
「ざけんなぁ~」
終電の座席で上目遣いに、ブツブツくだを巻いている顔に似ている。
<紅顔の美少年>の180度対局にいる存在、
<土気色のモンスター>だ。
愛されることもなく、あがめられる事もなく・・・
しかし・・・
アンコウを一度でも食べた人は、
その人間への吸収生命力に、驚く。
アンコウの生きていく力が、
直接、わが身に取り込まれる刹那を感じるのだ。
今、食った。
今、なんかしらん、甦った!
ゆうべ食った・・
今朝、なんか、蘇った!
なんか知らん、お肌ツルツルとか、
通販的な、感想が漏れるのである。
スッポンに、あい通ずる驚きの握りこぶしがアンコウの特製である。
それにしても、アンタの顔・・なんとかならんか!