《マダラ》
タラバガニは、タラ場で捕られる。
タラ場とは、タラが生息している場所の意だ。
ゆえに、タラバガニの命名に、
マダラが名前を差し出している。
よって、タラバガニの餌には、タラが使われる。
名前を差し出したあげく、餌にも使われる泣きたくなる魚だ。
その割には、魚屋での存在感が薄い。
スーパーの魚売り場で、その姿はとんと見ない。
タラと云えば、《タラチリ》である。
つまり、火を通せと命令されている。
刺身で食うなと言われている様なものだ。
ここで、みんなで古典的な言葉を思い出そう。
「ああ~たらふく食ったゾ、ゲフッ」
この
たらふくの、たらは、タラである。
ふくはフグである。
つまり、旨い魚の頂点フグと肩を並べられるのは、タラだと、
古の偉人達は語っている。
ゲップをしながら、腹を撫でている。
ところが、タラは、日常の食卓にのぼりにくい。
奥ゆかしいほどに、スーパーでも影の存在だ。
タラチリ以外、食べた事がないという方さえいる。
う~む、しょうがない・・
ならば、タラチリに特化してみよう。
ぶってり太ったタラの身でタラチリを食ってみよう!
焼くでもなく、煮るでもなく、湯の中に放り込まれた、
あのぶっとい脂ののったタラは、この時こそ真価を発揮する。
ここで、ふと・・・
フランス語には、男性名詞と女性名詞が分かれて存在している。
頭に、ルが付けば、男で、ラが付けば、女だ。
したがって、ラメール(海)は女性なのである。
このデンでいけば、タラとは、女性だと思いたい。
あのふくよかさと、静かなる落ち着きは、
ラを付けるにふさわしい。
たぶんタラは、
奥ゆかしさゆえに、頭ではなく、
尻尾にラを付けたのだろうか?