《つかこうへい正伝》 長谷川康夫著 新潮社
昨年出版された作品が、なんと、新田次郎文学賞に選ばれた。
先日、その授賞式が、都内で催された。
17才の時東京に来て、私が最初に読んだ本が、
《強力伝(ごうりきでん)》新田次郎著
読み終わるや、すぐに本屋に走った。
もっと読みたい。
買い求めたのが、
《孤高の人》新田次郎著
あっという間に読み終わった。
主人公加藤文太郎が山に一人で立ち向かう話だ。
はまった・・・
すぐに、キスリングを背負い山に向かった。
勿論、ひとり。
毎週、山に向かった。
新田次郎さんの本はすべて探し、すべて読んだ。
「チンネ、ルンゼ、キレット・・・」
マニアックな山用語も、山で自然に覚えた。
その新田次郎さんの最大の賞を、友人長谷川康夫が手にした。
つかこうへい氏が輝いていた時代を共に過ごした、長谷川によって、
見事に
再び輝かせてみせたのである。
受賞パーティには、当時のつか事務所の仲間、
役者やスタッフも駆けつけ、冷やかしながらも、
感動のひとときを味わった。
副賞の、晴雨計を押し頂いた長谷川。
「コレ・・どうしようかなあ?」
二次会の飲み屋で、皆がのぞきこむ。
『晴雨計って何?』
どんな質問でも、すぐに解説できる長谷川が喋りだす。
「温度湿度、気圧が測れるモノだネ」
『なんでコレが副賞?』
「新田次郎さんは、元々気象庁の方だったのネ」
『へえ~~』
「だから、《芙蓉の人》とか書いたんだヨ」
『ふよう?』
「富士山の気象レーダーの建設の前話だネ」
「今はなき山頂レーダーだ」
『ドラマ化され、長門裕之、南田洋子夫妻が演じたナ』
新田次郎さんは、私を山に駆りだしてくれた。
その気高き賞は、審査員はじめ、来賓の方々の、
頭の上で叩く盛大な拍手で讃えられた。
晴雨計 バイオリンほどの大きさ