「電動自転車の方がいいですヨ~」
街のレンタル屋に薦められて、電動自転車をゲットした私。
朝、ホテルの前で、サドルにまたがり、颯爽と朝陽を浴びていた。
これから、イタリア、トスカーナ地方の街シエナの、
古城都市に向かうのだ。
街全体が、城壁で囲われ、カタツムリのように、
頂上に向かって、常に登りの道が造られている。
だから・・電動サイクル!
漕ぎ出した!
グンッグンッ
快適に坂道を登ってゆく。
競輪選手とは、こんな感覚で上り坂を登っているのか!
驚きの感動を覚えながら、古城の急坂をこいでゆく。
あっと言う間に、テッペンの広場に辿り着いた頃だった。
ガタガタガタガタ
ん・・?
前輪がおかしい?
パンクしている。
腕組みをする。
(この急坂の街に、自転車屋があるだろうか?
いや、自転車の空気入れを持っている人が居るだろうか?)
いないだろナ。
ではどうする?
そうか!ここは、観光の街だ。
アノ人達がいるに違いない。
《サイクリングツーリスト》
いわゆる自転車野郎である。
探した・・
おお~ 野郎グループがいるではないか!
「へい!」
『イエェ~』
「空気入れ持ってないですか?」
『あるゼ、入れたげるヨ』
「ボク、ニッポンからきた、ケン」
『オレ、オーストリアから来た、ピーター』
すると、必死に空気を入れていたピーターが
何か手振り身振りで説明している。
よく分からない、
分からないまま、仲良く写真を撮ってアリガトさよならした。
走り出した、その5分後。
あっという間に、空気が抜けてしまった。
「ヌカに釘」と言っていたらしいピーター。
さて、このアップダウンばかりの坂道の古城都市。
歩くだけでも大変と言われたこの急坂を、
通常の自転車よりズシリと重い、
電動自転車を押して押して進む。
試しに乗ってみた。
ガタガタガタガタ
アゴが外れそうになった。
中世に造られた石畳は、
空気の抜けた車輪を想定していなかったようだ。
超のつく急坂では、電動自転車を担いで登った。
私は、何をしているのだろう?
「街の反対側の坂下に、メカニコ(自転車屋)があるヨ」
親切な街の人に地図まで書いて教えられ、坂を下った。
もちろん押して・・・
訪ねた店は、いかにもメカニコの雰囲気がプンプン。
しかし、誰もいなかった。
ふたたび、坂を押して登る。
そうか・・その昔、この町を造った人たちは、
この坂を、荷物を担いで登り、下り、生活をしていたのだ。
私の場合、まだ車輪が付いているだけでもヨシとしなければ。