《立ったら、とりあえず、トイレにいこう》
まるで標語のように唱えているのは、久々の登場、ナカヒラ君だ。
この標語は、どういう意味だろう?
せっかくだから、ナナカヒ君に直接説明してもらおう。
「あのネ、ウチで椅子に座っている時にサ、
ふと思うのネ
『そうだ、今度立った時、ついでに
爪切りを持って来よう』
そして、そのうち、ふと立つんだネ。
ところが、立ったものの、何をしに行くのか、忘れてる。
え~と、なんだっけ?
立ったものの、ボ~としている訳にはいかない。
ここはひとつ、目的を明確にしなくては・・
で、
とりあえず、トイレに行くと決めたのサ』
今の所、まだ記憶力がしっかりしているナカヒラ君が、力説する。
「で、しばらくすると、
爪切りを取りに行く事を思い出すのネ。
『よし、次に立った時に、そいつを持って来よう』
ところが、しばらくして、さあ、立った。
『アレ、何だっけ?』
思い出せない。
ま、いっか、
とりあえず、トイレに行こう。
要は、立ちあがった時に、目的を失ってしまう事を避ける為に、
とりあえず、トイレに行くのである。
「俺は、トイレに行くために立ったのサ」
しっかりと自信を植え付けているのである。
(え~と何だっけ?)
などと、いつまでも悩まない、後悔しない布石をうっている。
「それにサ、寝る頃に、頻繁にトイレに行けば、
夜中に起きなくてすむんだネ~」
この話を聞いたのは、前夜のキャンプの酒席であったらしい。
私は、その時、この標語を自分宛てにメールしている。
翌朝、携帯を見ながら、私がつぶやく。
《立ったら、とりあえず、トイレに行こう》って、何?
朝食をパクつきながらナカヒラ君が、二度目の説明をしてくれた。
私には、初聞きだったのだが・・・