鶏のレッグ、つまりモモ足を骨付きのまま、
焼いたり、唐揚げにして出す料理屋がある。
流行っている
流行っていると言ったが、そんな店は昔からあった。
50年前、大分の飲み屋に一家を連れて父親が向かう。
子供たちは、店に入る前から、
鶏モモの唐揚げに想いを馳せている。
なんせ、《つかんで喰らう肉》に出会える店だ。
肉そのものが滅多に食えなかった時代に、
かぶりつくと云うパフォーマンスを具現してくれる店だ。
肉を食いちぎる初めての経験をさせてくれる店と言おう。
肉を食いちぎる時には、歯だけではなく、
歯茎が活躍するのだと、初めて教えてくれた店だ。
肉をひきちぎる際、
歯茎のねばる力が、肉のおいしさを倍加させるのだと、
教えてくれた。
そして、わが家では、父親の食い方が、
肉の正しい食べ方を、指し示してくれた。
『骨までこそげ』
全ての肉を歯で食いちぎり、軟骨はガリガリと噛み砕き、
残った骨の表面を、「これでもか、これでもか」と、
歯でこそぐ。
いったん食い終わったら、骨をジィっと眺め、
まだまだ骨の周りにへばりついているスジの小片を、
もう一回こそぎ取る。
昔は、ここで終わらなかった。
「おい、集めろ!」
父親の号令で、
皆がこそぎ落とした骨を集め、油で揚げたのである。
つまり、骨付き唐揚げが夕食に出た夜は、
テレビを観ながら、
ガリガリバリバリ~
ウルサイながらも余韻に浸っていたのである。
ハゲワシまたぎ